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2026.Jul.04

離婚伝説がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!

離婚伝説がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!

ワタナベアツシの音がく探訪 #005

おはようございます、ワタナベアツシです。
HONDAのVEZELのCMソングはヒットを生むことで有名だ。

Suchmosから始まり、KingGnu、藤井風など歴代CMソングにはそうそうたるラインナップが並んでいる。
そして2025年からは離婚伝説の「ファーストキス」が採用されている。個人的に大好きなバンドなので、テレビからその歌声が流れてくると嬉しくなる。

離婚伝説は2022年デビューの2人組バンド。
ソウル、シティポップ、AOR、その豊かな土壌に根を張りながら、その音は驚くほど現代的だ。

2023年に発表されたスタジオライブビデオ「ミュージック・フロム・ビッグハウス」は、伝説的ルーツロックグループ、The Bandの「ミュージック・フロム・ビッグピンク」を思わせるタイトル、映像、衣装で音楽ファンをニヤリとさせた。
同じようにバンド名の「離婚伝説」も音楽ファンが思わずニヤリとしてしまう名前である。

由来はマーヴィン・ゲイのアルバム『Here, My Dear』。ところが日本では、この作品に「離婚伝説」という邦題が付けられていた。
『Here, My Dear』は本来「親愛なる君へ」といった意味だが、マーヴィン・ゲイが離婚後、慰謝料の支払いを巡る事情の中で制作した作品だったことから、こんな邦題になったらしい。
意味は分かるが、ずいぶん豪快な名前を付けたものである。

邦題は元々、英語になじみのない日本人に意味を伝えるために付けられていた。
古くからある文化だが、時代が進むにつれて、その本来の役割から大きく離れていく。
その歴史をたどると実に興味深い。
その代表選手といえば、ビートルズの「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」(原題:A Hard Day’s Night)。
長く大変な一日の終わり、といった意味だが、当時のビートルズ旋風そのものをタイトルにしたと言われている。
もちろん、こうした邦題は「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」だけではない。
独断と偏見でいくつかヘンテコな邦題を挙げてみたい。

◉ビートルズ
「4人はアイドル」(原題:Help)

◉ジェフ・ベック
「ギター殺人者の凱旋(原題:Blow by Blow)

◉クイーン
「誘惑のロックンロール」(原題:Now I’m Here)

◉エアロスミス
「お説教」(原題:Walk This Way)

このように邦題は、いつしか翻訳ではなく、ひとつの創作活動になっていった。
では、この文化は今も残っているのだろうか?

2020年、イギリスの大御所デスメタルバンドCarcassがリリースしたEP「Despicable」の邦題は何と「鬼メスの刃」。
別に歌詞の中に炭治郎が出てくるわけではない。
こうして邦題文化は絶滅どころか、現代のカルチャーを取り込みながら相変わらずのセンスで生き残っていたのだった。

考えてみれば、このバンド名も、その文化が生んだひとつの果実なのだろう。
本来は「親愛なる君へ」という意味の「Here, My Dear」が、日本では「離婚伝説」と呼ばれ、そのタイトルが数十年後のミュージシャンに受け継がれる。
少し乱暴で強引だが、そんな遠回りをしながら音楽は次の世代へ受け継がれていくのだろう。
そう考えると、この名前もなかなか悪くないものだったのかもしれない。


ワタナベアツシ

1975年生れ/山梨県甲府市出身。株式会社シグナイトCOO、甲府東高校軽音楽部出身。60〜80年代の音楽、文化、芸能をこよなく愛す昭和男。座右の銘は「どうせこの世はホンダラダホイホイ」。オリオンイーストにて学生向けフリースペース、SHIRO-no-IROを運営。

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COLUMN
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