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2026.May.01

「染め」の可能性を未来に紡ぐ

「染め」の可能性を未来に紡ぐ

プロフェッチョナル FILE.010

丸幸産業株式会社 取締役/堀内 洋平さん

丸幸産業株式会社は、富士吉田市上暮地の山奥にある小さな染め工場です。祖父が1970年に友人と創業し、今年で55期を迎えました。

私が小さかった頃、両親は共働きで工場の中が遊び場でした。当時は何気なく通っていたこの場所で、将来働くことになるとは思ってもいませんでした。

しかし、コロナ禍によって状況は一変します。当時の私はワーキングホリデーに行くため、退路を断って計画を進めている段階でした。突然の出来事で運命は大きく変わり、地元・富士吉田に戻り、「コロナ禍が明けるまで手伝う」という気持ちで仕事を始めました。

私が入社するまでの工場はOEM生産が主流で、営業や売り込みはほとんど行っていませんでした。アパレル商社からの仕事を淡々とこなし、大きなプロジェクトに関わっていても契約上、社名を外に出すことはできませんでした。常に受け身の業態であったため、海外資本の影響を受け、受注は年々減少している状況でした。

そんな中で私は、工場に入って製造に従事するのではなく、広告業界での経験を活かし、丸幸産業の強みである「長年培ってきた後染めの技術力」をどのように可視化できるかに着目しました。

まず注目したのは、弊社のこれまでの歩みです。丸幸産業は、日本のコレクションブランドの下請けとして長年稼働してきました。中でもクライアントのこだわりが強かったのが「黒」です。

黒は単調な色に見えますが、実は非常に繊細な技術が求められます。納得のいく漆黒に染め上げたとしても、日向と日陰で色味が変われば納品を受けてもらえないこともあったそうです。そうした地道な努力の積み重ねによって、現在の技術が築かれてきました。

このストーリーを知ったとき、「過程」の中で培われたこの“黒染め”の技術を、もっと手軽にお客様へ届けられないかと考え、BtoC向けのリメイクサービスを着想しました。

それが、現在のメイン事業である衣服の「黒染め直し」です。汚れてしまったお気に入りの服を黒く染め直すことで蘇らせるサービスであり、人前で着られなくなった衣服を再び着られるようにするだけでなく、その服に宿る思い出も未来へと紡ぐことができます。

また、従来の染色加工では最低ロットの条件を設けていましたが、黒染め直しではそれを撤廃し、一着から依頼を受けられる体制を整えました。これにより、個人のお客様にもご利用いただけるようになりました。

現在では、弊社の窓口やオンラインに加え、衣類補修事業を展開する企業との業務提携により、全国230箇所で黒染め直しのオーダーが可能となっています。

さらに、衣類を直接持ち込んでいただく染め物体験ワークショップの開催や、「ROUND HAPPY」「UNEVEN DYEING」といったプロダクトブランドの展開、富士山駅でのアンテナショップ運営、ポップアップ出店などを通じて、染色の魅力を直接感じていただく機会を広げています。

弊社の企業理念は「暮らしの中に染色(いろどり)を」です。私たちは単に生地や衣服を染める企業ではなく、染色を通じて人々の日常に彩りを添える存在でありたいと考えています。

入社して約5年。まだまだ自分自身にも会社にも課題は尽きませんが、半世紀にわたって培われてきた技術を、時代とともに未来へと紡いでいけるよう、日々精進してまいります。

染色の魅力は、まだまだ奥深いものです。

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堀内洋平(Yohei Horiuchi)プロフィール

1997年5月3日山梨県富士吉田市生まれ/丸幸産業株式会社取締役

駒澤大学卒業後、広告業界を経て2021年に丸幸産業株式会社へ入社。社内では主に広報業務を担当しており、弊社のDX化に奔走。数々のB to C事業を立ち上げ、現在は富士山駅にあるショップを拠点として経営しながら染色の「可視化」を試みる毎日である。趣味は古着屋巡り、FPSゲーム、サウナ、ラップ、洋画・洋楽鑑賞。

丸幸産業株式会社

ハタオリ(機織り)の街である山梨県富士吉田市にて、半世紀以上続く、後染め・後加工を専門とする染色加工業者。法人様向け生地・製品の染色加工はもちろんのこと、個人様向けの衣類染め直しサービスや染め物体験ワークショップの開催、アンテナショップの運営等、ステージ衣装制作等、幅広い事業を展開している。

住所〒403-0001  山梨県富士吉田市上暮地2222-1
TEL0555-23-5562
Mailcontact@marukousangyou.co.jp
公式サイトhttps://www.marukousangyou.co.jp/

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