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2026.Mar.01

放置竹林を、希望の灯りへ

放置竹林を、希望の灯りへ

プロフェッチョナル FILE.009

竹の空間演出家/竹王子 さん

 山梨県の山あいを歩いているとあちらこちらに竹林が広がっているのを目にします。綺麗に管理されている場所もあれば、長い間手が入らず、荒れてしまっている竹林も少なくありません。いわゆる「放置竹林」と呼ばれる状態です。放置竹林は、竹の密集・高密度化による暗さ、見通しの悪化と圧迫感、倒竹(とうちく)による見苦しさなどの見た目の問題だけでなく、竹が密集すると、イノシシやシカの巣食う場になりやすく、獣害に繋がるという問題があります。また、竹を切る人が減ってしまい「切りたくても手が回らない」「どのように扱えばいいか分からない」という声が多いのも問題の一つと言えます。
 
 さらに言えば、海外からの安価な製品の流入により、日本で竹が使われなくなった背景も一つの要因で、かつては日本各地で作られていた竹製品も、今では中国製をはじめとする輸入品が主流となり、国内で竹を使って生計を立てる人は、ほとんどいなくなりました。その結果、竹林だけが残り、そこに手を入れられない状況が今増えています。

 僕が関わっている竹の仕事は、まず竹林整備から始まります。その現場で間引いた竹は、想像以上に重く、硬く、扱いづらい素材です。一本一本がとても強く、加工にも手間がかかります。正直、簡単な作業ではありません。それでもその竹をただ切るだけでは勿体ないと思い、作品や空間装飾の材料として竹を使えないかと考え取り組んできました。イベントや祭り、神社や寺社、観光地などで竹灯りをはじめとする竹を使った装飾を行い「その土地に在る素材」で演出を行なっています。

 装飾やワークショップを行う会場で「この竹、どこから持ってきたんですか?」と聞かれることがよくあります。「この地域の竹林を整備した時の竹です。」と答えると驚かれることも少なくありません。その反応を見るたびに、竹林整備とそこから発展した芸術や表現はイメージし辛く、まだあまり認知されていないが、ちゃんと繋がるんだなと感じます。

 学生や地域の方と一緒に行うワークショップでも、同じことを思う瞬間があります。
竹は扱いにくい素材ですが、向き合う価値はあります。切って、削って、形にして、灯りが灯った瞬間、見ているみんなの表情が変わる。あの光景はやはり特別です。

 放置竹林問題は、一つの方法で解決できるものではありません。しかし、切るだけで終わらせず、使い道をつくること。人が関わる理由をつくること。その積み重ねが次に繋がると考えています。
 
 竹林整備から始まり、作品を作り、場を演出する。
 
 そんな流れの中で、今も各地の現場に関わっています。竹とどう付き合っていくかを一緒に考えていけたら嬉しいです。

竹王子(たけおうじ)プロフィール

山梨県身延町を拠点に活動する竹の空間演出家。放置竹林の整備を出発点に、間引きや伐採で生まれた竹を活用し、竹灯りをはじめとした装飾作品の制作を行う。イベントや祭り、寺社、観光地などで、竹の特性を生かした空間づくりを手がける。竹林整備から制作、設営までを一貫して行い、地域資源の循環と景観演出を両立。学生や地域住民と連携したワークショップも展開している。

DATA

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https://www.instagram.com/prince_of_bamboo_takeouji

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