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# NOVEL

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2025.Sep.08

マイナス思考を活かすレシピ

マイナス思考を活かすレシピ

HN:ながみね

劣等感という燃料

漫画「さんかく窓の外側は夜」の中には、劣等感や恨みといったネガティブな感情のたまり場を「原子力発電所」と呼ぶシーンがある。ネガティブな感情が持つイメージとその膨大なエネルギーを考えたとき、これ以上に上手いたとえがあるだろうか。そう考えると、わりと一般的な「劣等感を努力の糧にする」という方法論は、一時的に莫大な動力生み出す反面、努力が報われなかったときの精神的な代償が大きく案外リスクが高いと思う。それでも、ネガティブな感情の扱い方として広く採用されているのは、それだけ持て余すことが多いからだろう。

「仕事ができる人」実はネガティブ説

ネガティブな感情は、ネガティブであるがゆえに厄介者扱いされやすい。いやしかし、それほど悪いものだろうか。「〇〇になったらどうしよう」「これは不味かったのではないか」と考えること自体、危機管理能力がちゃんと働いている証拠でもある。物事をネガティブに考えてはじめて対策や準備という選択肢が出てくる。何ごとも卒なくこなしている人ほど、実はマイナス思考で準備に時間をかけているのはよくある話だ。私の両親はそれを絵に書いたような人で、常に先々を見据えて必要な物を準備したり率先して行動する人だった。世間一般的に「言われたとおりにしか動かない」と揶揄される自閉症スペクトラムを持つ私が、何かと事前準備を評価されるのはこの両親に鍛えられた部分が大きい。

それって本当に自分のせい?

「同僚が騒がしくて気が散る」。「急遽違う予定を差し込まれ、立て直しがうまく行かなくてイライラする」。ネガティブな感情は、身に危険を感じたときに自然な状態を維持しようとする防衛本能だ。その根本には、「集中して仕事がしたい」「落ち着いて仕事がしたい」などといった欲求がある。その欲求こそがその人らしさではないか。最近の流れでは「ネガティブなのは自分のせい」といわれたりもするが、自分らしい状態を捻じ曲げる要因がなければネガティブにすらなりようがない。所属している集団の雰囲気。そこにいる人の特性。気候、忙しさなどの環境要因。ネガティブな感情はそういった外部の圧力に対抗する生存戦略のようなものだと思う。つまるところ、ネガティブなのは貴方だけのせいではないのだ。

ネガティブさんは「炭坑のカナリア」に

かつて、炭坑の中で有毒ガスの発生を報せたカナリアのように、ネガティブな感情には危険を察知してそれを回避させようとする役割がある。残念なことにポジティブなときには、それはなかなか出てこない。どうせネガティブになるなら、悲観せず「これも自分ですが」と堂々としていたい。これは私の経験則だが、たとえネガティブでも「それは本当に大丈夫なんですか」「これってこうしたほうが後々の負担が少ないと思います」と建設的な提案につなげたり、その考えを行動に起こせる人は、たとえ本人に自信がなくても周りから高い評価を得られることが多い。煮えたぎる劣等感を過剰に投与していづれ大爆発を起こすか、あえてその危険を報せる炭坑のカナリアになるか。選ぶなら、私は後者でいたい。さて、あなたはどちらを選択しますか?

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CULTURE
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